東京写真美術館で開催されていた、恵比寿映像祭に行く。そこで小森はるかさん監督の『春、阿賀の岸辺にて』を観た。
佐藤真の傑作『阿賀に生きる』の発起人の一人の旗野秀人さんを追ったドキュメンタリーで、まるで『阿賀に生きる』『阿賀の記憶』に続いた三部作のようだった。ようだったというより、確実に佐藤真に連なっているから実質続編だと思う。
佐藤真も、『阿賀に生きる』に映っていた人たちもみんな死んじゃったけど、時折映画の中に映される『阿賀に生きる』の映像の中にちゃんと生きていた。映画がある限り消えずにちゃんと残る。彼らが残したものはちゃんと旗野さんや小森さんに受け継がれていて、今の時代にもしっかり存在していたことに泣く。
残すことは映画の最も価値のあることなのだと思った。
旗野さんが事務所を引き払うことになって事務所の中を整理する場面、アルバムの写真に写る佐藤真と阿賀の住人たちの笑顔が忘れられない。旗野さんはもっと忘れられないのだろうと思った。ついつい手を止めてアルバムを開いて懐かしむ旗野さんに微笑んでしまう。でもあのアルバム、アーカイブとかに寄贈とかした方がいいんじゃないだろうか?ものすごく貴重なものだと思う。
毎年開催されているという『阿賀に生きる』の上映会では、撮影をした小林茂さんが16mm映写機を持ち込んで映写をする。「バラバラバラ」とフィルムが回る音の中で映画を観続ける参加者たち。心底羨ましいと思った。「この音が良いんだ」と旗野さんが呟いた。
劇場で公開されてほしい。